冬の「超」怖い話に備えた新人育成 


「超」公開自主トレ


「超-1終わった、結果が決まった、後は冬まで遊んで暮らせるぞう……」

 ……というほど「彼ら」がのんびりしているのかというと、そういうことはありません。

 結果を知らされたその日の内から、
「やっぱ嘘です。なんちゃって。ほんとです」と翻弄され、さらには
「原稿が遅れると大変なことになります」と脅され、
「万一のときは三位の人が浮上です」と脅され、
「来年超-1やることになったら、再来年はどっちが残ってるかなあ?」と脅され、
「ペンネーム決まりましたか? 一生呼ばれる名前になると思うので、夢見がちな名前を付けないように」と脅され、
 ……とにかく、脅かされまくっています(^^;)

 もちろん、脅しているばかりではありません。
 冬の本番に向けて新たな取材、メモの整理と、再充電中ですし、「とにかく早めに原稿ください」というオーダーに沿って、早くも冬の原稿に取りかかってもらっています。

 常々言ってきましたが、文章力というのはこれはもう、数を書いて場数を踏めば嫌でもこなれてくるものです。しかし、冬の本番がぶっつけ本番になってしまうのは、「彼ら」にとっても怖いと思います。もちろん、僕もそれは怖いです。ですから、本番前に、ちょこちょこと先行して原稿を見せてもらったりもしています。

 が。
 やはり、「人前に出さない原稿」というのは隙ができてしまうものです。大勢の人に読まれる、という緊張感を保って書かれた超-1後期作品群のなんと素晴らしかったことか。やはり芸人同様、モノカキも「読者の前」という舞台に立って練習してこそこなれていくというものです。

 でも、どこで?
 もちろん、ここで。

 そういうわけで、「彼ら」には、自主トレに励んで頂くことになりました。

 彼らが取材中の新しい怪談は、冬まで楽しみにしていてもらうことにするとして、彼らの「体験談を怪談にする技術」の実地研鑽と現時点での仕上がり具合を、不定期ながらこの自主トレプログラムにおいて公開してみることにしました。

 かつて、勁文社時代に書かれた「超」怖い話。
 そのうち、加藤が書いた話というのは「超」怖い話(第一集)から彼岸都市までを合わせると、約100話あります。そのうち第一集と第二集・続「超」怖い話を合わせた分だけで40話もあるわけで、初期「超」怖い話に結構書いてたんだな、と……。
 初期「超」怖い話の頃、僕はまだ20代前半でモノカキとしてはまったくもってペーペーのさらに下くらいでした。初期の「超」怖い話時代と言えば、まだその後の方向性もしっかりとは固まってはいなかった時代。その時代に書いた怪談ですから、それはもう今見直すと「書き直したい!」という衝動に駆られるものばかりです。

 その僕が書き直したい怪談を、敢えて「彼ら」に託してみようと思います。90年代初頭に、その時代の潮流とその頃の腕前で一度書かれた怪談を、それから15年以上過ぎた現代の潮流と今の「彼ら」がリトライしたら、いったいどのような怪談が現れるのか。同じ脚本を、監督や役者を変えて作り直したらどんな仕上がりになるのか。
 元の怪談の単純な焼き直しになるのか、無駄をそぎ落として洗練されたものになるのか、ちょっと見てみたくはありませんか? 何度も何度も手を加え悩み閃き、書いては捨て書いては捨て……「彼ら」のそういう自主トレの経過を皆様にもご覧いただきたいと思います。

 超-1を体験したすべての人にとって、おそらくはもっとも馴染んでいる、あのスタイルで。

 冬はあっという間にやってきます。
 タイムリミットは3ヶ月です。

―――― 加藤 一 


……という企画を、2006年8月〜11月くらいまで行っていましたが、
「超」公開自主トレblogは、好評のうちに完了しました。

超-1/2007