冬の「超」怖い話に備えた新人育成  
「超」公開自主トレ  
 

2024年7月
  1
2
3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      

最近の記事
おいかけて(時計7)

残されたもの(時計(6))

おくりもの (時計(5))

時計(4)

過去ログ
2006年11月
2006年10月
2006年 9月
2006年 8月

 



おいかけて(時計7)
 汗が止まらない。
 なのに悪寒が続く。
 東沢さんは高熱で倒れていた。
 一人暮らしなので、誰かが看病をしてくれるということもない。
 ただ魘されることしかできなかった。

 そんな中、夢を見た。
 辺り一面真っ白な所に、東沢さんは立っている。
 壁があるわけでもないから、屋外なのかもしれない。
 まるで寒さを伴わない雪原のような所だった。
〈……もう、駄目なのですか?〉背後から声が聴こえた。
 驚き、振り返る。
 そこに女性が立っていた。
 白い顔。白い手。白い服。白いものが混じった髪。
(この人は……)
 前付き合っていた彼女の母親だった。

〈もう駄目なのですか? あなたは私の娘と本当に別れてしまうのですか〉
 そう言う彼女の母親は悲しげな顔をして、東沢さんを見つめていた。
 答えに窮していると、また同じ言葉を繰り返す。
〈もう駄目なのですか? あなたは私の娘と本当に別れてしまうのですか〉
 そうか。この人は娘と僕の行く末が心配で追いかけてきたんだ……。
 しかし。
「すみません。もう元には戻れません」
 絞り出すように、そう答えた。

 ふいに目が覚める。
 見慣れた天井。見慣れた箪笥。愛用の机。
 ちゃんと薄暗い自分の部屋のベッドの上にいた。
(いやにリアルな夢だったな……)
 流れる汗を拭いながら、東沢さんは大きくため息をついた。

 漸く熱も下がったある日のこと。
 東沢さんは散歩に出た。
 熱で萎えた身体のリハビリと買い物を兼ねて、だった。

 病み上がりということもあってか、足元が少々ふらつく。
 サンダル履きの足元が、いやに頼りない。
 まだまだだな、と顔を上げたとき、驚いた。
(……あれは!?)
 透き通るような白い肌。見覚えのある横顔。
 通りの向こうに別れたはずの彼女がいた。

(まさか、僕を追いかけて?)
 いや、それはない。何故なら彼女に新居の住所は教えていない。
 大体彼女はここから何百キロも離れた場所に住んでいるのだ。
 こんなところに来ることは、ありえない。
 だが。

 思わず彼女を追いかけた。
 彼女はどんどん歩いていってしまう。追いつけない。
(まだ僕は彼女のことを)自分の気持ちに気がつく。
 サンダル履きの萎えた足が、恨めしい。
 彼女の後姿が路地の陰に入ったところで、遂に見失ってしまった。
 路地の奥は袋小路。見失うわけがない。だが、彼女の姿はどこにも無かった。
「くそっ! なんなんだよ!」
 諦めきれず、半日かけて辺りを探し回った。
 だが、東沢さんが再び彼女を見つけることはなかった。

 数日後、友人に電話をした。
 別れた彼女のことを訊くためだった。
「お前の元カノ、ずっと病気で寝込んでいるんだぜ。そこに行きたくても行けねぇって」
 そういって友人は笑った。
 ひとしきり笑ったあと、突然真面目な口調に変わる。
「あとさ。元カノのお母さん、この間亡くなったんだぜ。知ってるか?」

by 時計 ¦ 20:42, Tuesday, Nov 28, 2006 ¦ 固定リンク ¦ 携帯

△ページのトップへ
 


最近のコメント
viagra online on ガスとビニール(7)

order viagra on ガスとビニール(7)

cheap viagra on ガスとビニール(7)

viagra online on ガスとビニール(7)

最近のトラックバック
Phentermine. (Phentermine cash on delivery.) «

How much adderall can you inje .. (Adderall prescription.) «

Zoo sex. (Zoo sex.) «

Buy viagra online. (Buy viagra uk.) «

Ringtones for motorola. (L word ringtones for motorola krzr by verizon.) «

携帯で読む
   URLを携帯に送る


フリーソフトで作るブログ