冬の「超」怖い話に備えた新人育成  
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おくりもの (時計(5))
 その日、東沢さんは机の整理をしていた。
 長年愛用の机だけあって、いろいろなものが詰まっている。
 使いかけのノート。
 千切れた消しゴム。
 空になったシャープペンシルの芯ケース。
 キャップの無くなったボールペン。
 使いかけの修正液。
 プリントの束。
 レシートと領収書、等々。
「我ながら呆れるな」と東沢さんはため息をついた。

 作業中、机の奥から万年筆が出てきた。
「あれ? これは」
 はた、と膝を打った。
 ずっと昔、彼女に貰ったものだ。
(別れてもう何年経ったかな……彼女は今どうしているのだろう?)
 懐かしさが込み上げてくる。
「おっと。いかんいかん」
 万年筆を机の上に置き、次の引き出しに取り掛かった。
 文庫本。手帳。そして、チョーカー。その他いろいろなものがぞくぞく出てくる。
 全て当時の彼女がくれたものだった。
(そういえば、結構いい腕時計も貰ったなぁ)
 と、思い出を反芻していても作業は終わらない。
 懐かしむのはあとだ、と作業を再開した。

「ふう、これで最後か」
 すでに外に夕闇が迫っていた。
 部屋の中は薄暗くなってきている。
 一番下の引き出しを開けた。
 一番上に、ぽつん、と見知らぬ小箱が乗っている。
 手に取ってみると、少し重みがあった。
 振ってみると、コトコトと幽かに音がする。
 何かが入っているようだ。
 蓋に指をかけようとしたとき。
 ぴりっ。
 背中に静電気のようなものが走った。
 何故か指先が震える。
 小箱の重みが増したように感じた。
(……あ)
 はじかれたように机の上に見た。
 万年筆。文庫本。手帳。チョーカー……。
 何年も前、これらは全て実家に置いてきたはずだ。
 そう。別れた彼女を忘れるために。
 もう一度、手の中の小箱を見た。
 身体の奥で何かが鳴り響く。
 部屋が更に暗くなったように感じた。
 だけど。
 震える指先で、ゆっくりと蓋を開けた。

 瞬間、ぷん、と泥の匂いがした。
 箱の中に入っていたのは、泥に塗れた腕時計。
 そっと箱の中から取り出し、湿った泥を指で拭った。
「これは……」

 その腕時計は、別れた彼女からの贈り物だった。
(これも彼女を忘れる為に実家に――)
 いや、違う。
 この時計だけは、実家の竹薮に投げ捨てた。
 一番気に入っていたから。
 一番彼女との思い出が詰まっていたから。
 だから、捨てた。
 あれからすでに何年も何年も経った。
 なのに、当然のように、ここに。

 その腕時計は捨てることができないまま、今も東沢さんの手元にある。

by 時計 ¦ 15:59, Thursday, Nov 16, 2006 ¦ 固定リンク ¦ 携帯

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