← |
2024年12月 |
→ |
日 |
月 |
火 |
水 |
木 |
金 |
土 |
1 |
2 |
3 |
|
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
15 |
16 |
17 |
18 |
19 |
20 |
21 |
22 |
23 |
24 |
25 |
26 |
27 |
28 |
29 |
30 |
31 |
|
|
|
|
|
「……正直な話、興味本位だったんだ」 森村氏が、友人達と行ったと言う【ある実験】について話してくれた。
深夜、密閉された部屋。 心細く揺れる蝋燭の灯りの中、男数人で車座を組む。 「開始してすぐに、一人の様子がおかしくなって」 彼は、座った姿勢のまま失神しているように見えた。 動揺した仲間達に声をかけられても、返答がない。 やがて、細く長い息。
<……自殺。自殺した。痛い。苦しい。苦しい。助けて……>
「いつもの声じゃない。いや、この世の声じゃなかった」 錆びついた女の声。 金属的で、耳障りな囁き。 それは、死者の独白だった。 彼らの【実験】は成功した。 しかし、興奮も束の間。 「すぐに後悔したよ。会話にならないんだ。この世への恨み言を延々と、何時間も……」 脳を汚染する怨嗟の念が、暗い室内に充満した。 実験参加者の気力と体力も、急速に奪われていく。 誰かが「よくわかったから、もう帰ってくれ」と呟いた。 皆、無言で頷く。 遊び半分で呼び出した事を謝罪し、友人の体から出て行ってくれるよう頼んだ。 死者は、納得しなかった。
〈帰らない〉「頼む、もう帰ってくれ」〈帰らない〉「帰れよ」〈帰らない〉
押し問答が続く。 埒が明かない。 業を煮やした森村氏たちは、無理矢理に実験を中断した。 死者の代弁をしていた友人の顔を覗き込む。 疲れた顔をしていたが、無事元の彼に戻ったようだ。 その夜は、そのまま解散した。
実験からしばらく経った頃。 参加者の一人が、バイクで事故を起こした。 飛んできたビニールに視界を塞がれたのが原因だった。 もう一人は、火災に合い自宅が全焼。 原因は、ガス漏れ。 別の一人は大切な自転車を盗まれた。 発見された自転車は、ビニールで厳重に梱包され川に投棄されていた。 他にも次々と、実験の参加者全員が不幸に見舞われた。 そしてそれらの原因全てに、ガスか、ビニールが絡んでいた。
「もしかしたらあの女のせいじゃないか、って」 〈ビニール袋を被って、それからガス管を咥えて、自殺したの〉 あの死者は、死んだときのことをそう語っていた。 「……俺らの方にあの女の興味が向いちゃったのかもしれない」 面白半分にあんな事をしちゃいけなかったんだ、と森村氏は呟く。 一瞬の静寂。 静まり返った室内に『カチッ』と、小さな音が響いた。 音のした方向は風呂場。 流れてくる、ガスの臭い。 |
■ Trackback Ping URL
外国のスパマーへのトラップです(本物は下のほうを使ってください)
http://www.chokowa.com/training/blog/trackback.cgi20060911021907
■トラックバック
この記事へのトラックバックURL(こちらが本物):
http://www.chokowa.com/training/blog/blog.cgi/20060911021907
» ガスとビニール(2) [ささいな恐怖のささいな裏側から] × (1)とほぼ同様。ダイジェスト版の感は否めない。そして、これも(1)と同様、「袋 ... 続きを読む
受信: 14:06, Monday, Sep 11, 2006
■講評
■講評を書く
|
|