← |
2024年12月 |
→ |
日 |
月 |
火 |
水 |
木 |
金 |
土 |
1 |
2 |
3 |
|
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
15 |
16 |
17 |
18 |
19 |
20 |
21 |
22 |
23 |
24 |
25 |
26 |
27 |
28 |
29 |
30 |
31 |
|
|
|
|
|
長岡君は“電話魔”である。 その日の相手は、雑誌で知り合った友人。
「テレビ電話みたいなのがあると、もっと便利なのにねぇ」 『そうだよねー』 そんな、他愛もない長電話をしている最中の事。 ふと、机の隅にあるティッシュの箱が目に入った。 取り出し口からは、真っ白なティッシュ・ペーパーが飛び出している……のだが。
(んん?) 飛び出したそのティッシュが、するりするりと箱の中に入り始めた。 それがさも当然、といわんばかりの動き。 シュレッダーに吸い込まれるコピー用紙か、もしくは手繰られる蕎麦を連想する。
呆気にとられて見ているうちに、ティッシュは全て、箱の中に納まってしまった。
『おい、長岡ぁ。どうしたぁ?』 友人の声で我に返った。 慌てて事の次第を話す。 『んー、まぁ、紙の残りが少なくなると勝手に落ちるし』 「いや……それはないなぁ。まだ半分以上残ってると思う」 『ふーん。じゃあ、中に虫かなんかいるんじゃねーの? そいつの仕業とかさ』
――不吉な事を言う。
虫。 勘弁してくれ。 長い触角を持ち厭らしく黒光る扁平な体躯のアレ、だろうか。 それとも、薄茶色の身体に強靭な長い脚を備えたアレ、だろうか。 いやいや、数え切れぬ体節と脚と毒を持った忌わしいアレ、かもしれない。 ひょっとすると、手も足もなくうねうねと這い回る禍々しい幼体のアレ、な可能性も。 両腕がぞぞぞと粟立つ。
が……、怯えていても仕方がない。 恐る恐る手を伸ばし、ティッシュの箱をつついてみた。
中に何かがいるような反応は全くない。 手に取り、振る。 やはり何の手応えもない。 逆さにして振ってみる。 何も出てこない。 どこかに張り付いているのだろうか?
『ふーん。だったら、箱を開けて見てみれば?』 (受話器の向こうだから、無責任な事が言えるんだ) とはいえ、それしかないだろうな……。
縁から、ナイフでそろそろと切り裂く。 箱は容易に解体された。 深呼吸。 覚悟を決め、さっと箱の内部を覗き込む。
――むはぁっ、とため息。 「……よかった。虫はいないみたい」 『ほんとに?』
念のため、中身を取り出して確認する。 一番上のティッシュは、丁寧に折りたたまれていた。 皺の一つもない。
「うんうん。綺麗なもんだよ」 『へえ。……じゃあ、何で吸い込まれたの?』 |
■ Trackback Ping URL
外国のスパマーへのトラップです(本物は下のほうを使ってください)
http://www.chokowa.com/training/blog/trackback.cgi20060805070000
■トラックバック
この記事へのトラックバックURL(こちらが本物):
http://www.chokowa.com/training/blog/blog.cgi/20060805070000
» [自主トレ]ティッシュペーパー(1) [極私的【超−1】講評から] × この怪異でここまで話を延ばすのはどうかというのが第一印象である。 しかも延ばし方が怪異の本筋とはちがうカテゴリーである“虫=生理的嫌悪の象徴”というのも、少々首を傾げる要因となっている。 中盤は純粋な怪異というよりも、読者に対して不快感を与える効果を .. ... 続きを読む
受信: 04:54, Monday, Aug 07, 2006
» ティッシュペーパー(1) [ささいな恐怖のささいな裏側から] × 元作品をすなおにリライトした話、と思った。もちろん、微妙に差はある。元作品では最 ... 続きを読む
受信: 11:59, Monday, Aug 07, 2006
» ティッシュペーパー(1) [I'd like to tell you something about ...から] × 実は「虫」の類が平気なわたし。 一瞬ドキッ、とはするけど何が入ってるのかと箱を開ける辺り「ワクワク」してしまった。 それはさて置き、私的に違和感があったのは「ナイフ」という表現。 ナイフって、一般家庭にあるかなと引っかかった。 もし自分が開けると .. ... 続きを読む
受信: 16:00, Wednesday, Aug 09, 2006
■講評
■講評を書く
|
|