■プロジェクトとしての目的
「弩」怖い話はいくつかの課題を抱えています。それらを解決しないままシリーズを起動したことについては、泥縄の見切り発進というお叱りをいただくことも重々承知の上でした。 むしろ、こうした同様の試みが、何故なかなか実現、進展しないのか、その問題点/課題を浮かび上がらせることによって解決すべき点を読者の皆様と共有する必要があると思います。また、そうした問題点/課題を回避・解決するための方法について、いつかたどり着くベストの前に暫定的なベターを探っていくことが、「弩」怖い話というプロジェクトの目的と言っても過言ではありません。 ネット上の秀作怪談を、書籍のカタチで残していくために、何が障害になるのか、どうすればそれを回避できるのか。 そのための方法を実際に模索し、成果を発表する受け皿として「弩」怖い話が役立つことを切に願っています。
■現在抱えている問題
「弩」怖い話が現時点で完全に解決したとは言えない問題は、以下の通りです。
- 匿名投稿の再録については、原体験者/原投稿者の同意が必要
(出版社側の条件として、今回は同意を得ることができたものだけを再録しています)
- 匿名投稿の原文を一字一句変えずにそのまま収録するか、内容を損なわないように文章を整理するか
(出版社側の条件として、「弩」怖い話は、元の文章を素材と捉えて加藤の責任で整理・肉付けする方向を選択しました)
- 元の匿名投稿の出自についての扱い
(体験談の出自を明確にすること、本人の希望に基づき元の体験者/投稿者の識別名(コテハンなど)を明確にすることなど。今回は、元の体験者/投稿者の名前(匿名)を紹介するとともに、2ちゃんねる由来の体験談については、元になった作品名を併記しています)
- 匿名投稿(体験談)の蒐集整理と、原体験者/投稿者の申し出を受け付けるための方法
(現時点では、データ蒐集、検討、整理のために「弩」怖い話データベースを用意しています。今回収録の2ちゃんねる由来体験談については、このデータベースが効果を発揮し、元の投稿者による名乗り出を促すことに繋がりました)
- 名乗り出た原体験者/原投稿者が、それと指定された作品の初出作者であることを証明する同定方法
(今回は、作者でなければわからない補足内容などの有無で判定しています)
- 元の匿名投稿の権利についての扱い
(すでにネットなどに発表済みの体験談を掲載する場合、これについての著作権、出版権はどのような位置づけになるか、について。これは、長くなるので詳しくは別途項目を設けたいと思いますが、著作権は体験そのものに発生するのではなく、記事そのものに発生するという解釈が一般的だそうです。ルポにインタビュー記事が載ったとき、インタビューに応じた人の発言/元になったメモではなく、それを記事として書き起こした人の文章そのものに著作権が生じるのと似ています)
- 印税報酬などについての扱い
(すでにネットなどに発表済みの体験談を掲載する場合、これらの原作者に対して印税支払いを行うための具体的な方法を考える必要が残っていると思います。これは大いに議論を喚起すべきでしょう)
- 実話だけを扱う(「超」怖い話のスタイル/路線を守る)か、実話かそうでないか明確な断りがないものも「怖ければアリ」で採用するか、それとも怖ければ実話ではないと原投稿者が明確に宣言しているものもアリにするか
(現時点では「超」怖い話の姉妹編ということもあって、実話もしくは明確に創作と宣言されていないものを採用しています。が、個人的には将来的にはいろいろな選択肢があっていいと思います)
これらの解決には、読者の意見に加えて、何よりも原体験談を発表されてきた方々ご自身の意見、要望、同意などが重要になってくるものと思います。投稿者全員に統一された見解があるとは限りませんし、また掲載収録や文章整理などについても、それぞれご意見をお持ちなのではと思います。これについては、それこそ個別に対処できるようにしていかなければならないでしょう。 今回の「弩」怖い話は、過去に2ちゃんねるを始めとする掲示板に匿名で発表された秀作怪談のうち、元の体験者/投稿者の方から直接メールで許諾をいただけたものだけでなく、著者:加藤の元に直接メール投稿、メール取材、電話取材、接見取材などを通じてお知らせ頂いた体験談(これらの蒐集手法は目新しいものではありませんが)のみを収録しています。
次回(初巻が営業的にも内容的にも評価されなければ次回はないのですが)以降、「過去に匿名で発表された体験談」の割合を増やしていくために、初巻では理念・コンセプトの訴えと、賛同者(原体験者/原投稿者による同意)の応募をお願いすることに重点が置かれています。
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