超‐1/U-25 #2024 作品受付はこちら
by Google form

コラム
加藤 一が、怪談作家になったわけ
2024/2/22


加藤 一(かとう はじめ)

■プロフィール

1967年生まれ。静岡出身。
怪談作家、児童怪談作家、小説を少々、監修者、編集者。

■デビュー作、代表作、最新作

  • 『エアーソフトガン2大百科』(1986年/勁文社)
  • 『ガメル連邦』(1987年/富士見書房ドラゴンマガジン)
  • 『「超」怖い話』シリーズ(1991-2000年/勁文社)
  • 『「超」怖い話』シリーズ(2003-2024年/竹書房)
  • 『「弩」怖い話』シリーズ(2004-2007年/竹書房)
  • 『「極」怖い話』シリーズ(2008-2015年/竹書房)
  • 『「忌」怖い話』シリーズ(2016-2021年/竹書房)
  • 『「弔」怖い話』シリーズ(2022-2024年/竹書房)
  • 『恐怖箱』レーベル総監修(2007-2024年/竹書房)
  • 著、編著、共著、監修、編集のみを合わせて、怪談本ばかり220冊以上を手がける。

    ■差し支えなければ御本業は?

    作家を本業にしたい(作家専業)を目指されている方は多いと思いますが、個人的には「まず兼業作家であったほうがいい」とは思っています。チャンスは余さず掴むべきだと思いますが、いきなり全てを擲って専業になるのは色々リスクが高いので。まあ、「兼業としての作家業が、本業を圧迫するほどになってきたら、そのときは専業を考える」くらいでいいんじゃないかな、って。昔のSF作家さんなんかは大御所でもそういう人多かったんですよ。
    そういうお前はどうなのかと問われますと、僕の本業と本質は編集者のほう、だと自分では思っているんですが……。
    なので、その意味では僕も実は「兼業作家」と言えますね。

    ■怪談作家になったきっかけは?

    昔勤めていた会社の先輩だった安藤君平先生(「超」怖い話初代編著者)と樋口明雄先生(「超」怖い話二代目編著者)に、「ハジメ、君は変な話持ってるんだろ。編集やれ」「ハイ」と誘われたのが、「超」怖い話だったんです。
    「不思議な話」を集めてはいたけど、「怖い話」が好きだったかと言われると実はそうでもなくて、割と臆病で怖がり。「超」怖い話を始めたばかりの頃はしばしば心霊スポット巡りに連行されて怖い目に遭ったりしていましたが、「行かないでいいなら行きたくないんだよなあ」と、おっかなびっくりなのは未だ変わらず。
    子供時代の心霊番組や恐怖漫画も大体布団を被ってやり過ごしていたはずなんですが、今も真夜中に我に返って「何故自分は怪談を生業に……」と自問することがたまにあるくらいです。

    ■超-1の思い出

    超-1は開催するほうでした。
    参加者でなく開催者視点で言うと、超-1は「とにかくたいへん!」でした。
    当時、【「超」怖い話十五周年企画】と銘打って、「超」怖い話の書き手を発掘するという名目で始まったのが、想定外に盛り上がりすぎて翌年以降も開催になったんですよ。
    今より手探りだったこと、想定していたより多くの参加があったこと、そんなにくるとは思っていなかったので集計で死にそうになったことなどはいい思い出ですが、結果的に今も活躍を続ける多くの怪談作家を発掘することにも繋がったので、やった甲斐はあったかな、と。
    超-1参加者視点の話は、いずれ他の現役怪談作家諸氏にも伺ってみたいところです。

    ■どんな怪談が好き?

    前述しましたが、本来は「不思議な話」が好きです。
    また、「当人は酷い目に遭っていてオオゴトになっているのに、端で聞いていると突っ込みどころの多い笑える怪談」は割と好きです。『「超」怖い話Ε(イプシロン)』収載の「柏手」や、『ヒビカイ――366日の怪談 #2024』収載の「さすっ手」「フランベ」などは、自己紹介を求められたときに名刺代わりに語ったりするくらいには好きな話。
    他に、発表する先を選ぶのでなかなか世に出せないんですが、ライフワークとして『「弩」怖い話3 Libido with Destrudo』(絶版/竹書房)にまとめたような、閨の怪談を集め続けています。

    ■自分の作風を自己評価すると?

    「超」怖い話の先輩著者諸氏が培ってきた「引き算の怪談」という方程式に割と忠実なので、怪談作家としては王道で古典派の部類に入るんじゃないかなあ、とは。
    時折、ノンフィクションめいた記法でないと全体を再現できない大ネタに取り組むことがありますが、それを除けば「おっかなびっくりの怪談初心者に最初の一冊として読んで貰えるもの」を目指しているつもりです。
    が、奥が深くて、三十三年やっても全然到達点が見えないんです。

    ■怪談界でライバルを挙げるとしたら

    聞き取り取材系怪談界の最末席にいた時期が長い割に、そこそこベテランになるまでライバル以前に同世代の怪談作家さんに出会うこともあまりなかったんですよね。安藤先生、樋口先生、平山夢明先生などの先輩著者は、僕にとってはあくまで師事する先輩だったので。
    そこへ行くと、Googleで「怪談作家」で検索すると出てくる「作家/怪談」の一覧に名前が出てくる怪談作家さんはライバルというより、心強い同業の志と思っています。 あの一覧、僕の名前出てこないんですよw
    まあ、ロートルのライバルはいつだって「新たに頭角を現してくる次の世代」なんですけどねw

    ■最近、注目している怪談作家

    超-1/U-25に応募してくる怪談作家さんたち。今年はそれ以外考えられないです。

    ■新人、若手に一言

    「すごい怪談を一話だけ見つけてくる」とか、「自分の体験したとっておきの話を蔵出しする」というのは割とできるんですが、「取材し、探し続ける」「書き続ける」というのは割と大変。どんどんネタが尽きたりするし、自分の感覚が麻痺してきて「怖い」が何だか分からなくなって迷走し始めたりするし。
    が、「見つけてきた話はとにかくどんどん書いて出していく」というのを続けると、文章力は上達するので、文章のうまい下手はあまり気にしなくても大丈夫。そこは、編集者が助けられる部分なので。
    体験者に聞き取りして書く怪談は、「取材七割」「原稿三割」くらいで、むしろ取材が本番みたいなとこがあります。
    未だトップランナーで書き続けている怪談作家さんは、とにかくべらぼうに取材を続けておられます。すごいネタを探してくるというのは引き寄せる運/ツキもあるんでしょうが、出かけていって誰かに会う、人とたくさん話をする、というのを続けていかないとすぐに尽きてしまいます。
    というわけで、超-1/U-25では取材力があって、次々に書ける馬力がある人が有利になるんじゃないかとは思います。勝ち抜けた人はこれまで同様、商業作家としてスカウトするつもりでいるんで、もう本当に是非とも頑張っていただきたいなあ、と。
    楽しみにしています。

     

    超‐1/U-25 #2024 作品受付はこちら