2007年度ランキング 総評


 

2007年度超-1ランキングは、1位を該当者なしの空位としました。

超-1は、実話怪談著者を発掘する大会として位置づけられていますが、その審査基準には幾つかの重要な要素があります。

  • 多くの体験談を発掘する取材力があること(より多くの話数を発表し、続けられること)
  • 体験談の骨子を、説得力のある文章で読者に伝えることができること(文章技術力があること)
  • 読者により多くの期待を持たれること

今大会は昨年に引き続き参加された方、今回初めての参加の方を含めて、応募数では昨年の上位陣に迫る規模の方も多く、取材力或いは怪に呼ばれる才のある方が多く見られました。
一方で、数は多くはないけれども、元の体験者が訴えたい内容を余すところなく再現し、読者に対して説得力のある文章を書かれた方も多く見られました。
集められた体験談、怪談についても、類例を余り聞かない希有なものが目立ち、大会全体としては昨年の第一回大会に引けを取らないものであったと思います。個々の作品を見れば、点数の多寡に寄らず、昨年蒐集発表された怪談にインパクトで上回る怪作・稀作もありました。

しかし、多く書ける人の作品全てが安定して期待値に達しているとは限らず、また良く書けた人が今後、さらに多くを書けるほどの数を発掘できていたとも言えず、期待の集まった稀作の著者はごく寡作であったりもしました。
その意味で、パワフルな総合力のある怪物級の書き手がいたかと言われれば、これについては今年度は該当者を無理矢理決めてしまうのは難しい、という結論に達しました。

知っての通り、怪談読者は常により強い刺激を求めます。常に恐怖のインフレが起こり、ジャンキーの要求レベルは常に「より以上」を求めます。故に、超-1の覇者は、常にその直前の覇者を凌駕することが期待されています。前大会覇者であり、「超」怖い話チームに加わり、単著でその実力が試されている久田樹生/松村進吉は紛れもなく覇者であったと言えるでしょう。
新たな覇者は、それに匹敵するかそれを超える書き手であることを、常に期待されるものと思います。ハードルが上がり続けていく、前よりもっとという厳しい要求に晒され続けるのが、怪談。恐怖という演し物を手がけるとき、その手綱を弱めることは許されない、そういう厳しい読者の審恐眼に応えられることが要求されるのではないでしょうか。

超-1/2007の全体レベルは昨年と比べて引けを取ってはいません。それは間違いありませんが、昨年を凌駕する覇者にふさわしい書き手という意味では、今回は以上のように結論を見送る形となりました。

 

ただ、超-1ランキングは会期中の作品応募数、個々の作品に対する評価を総じた総合順位ではありますが、ランキングの現在順位が必ずしも、次への道を保証するものとは限りません。
久田樹生、松村進吉に続く、超-1出身者による単著第三弾の刊行に向けて既に執筆中の雨宮淳司氏(じぇいむ氏)のように、超-1ランキングでは必ずしも高位ではなかったにも関わらず、次への道が開けることはあります。

今回のランカー各位の中から、結果的には覇権を争う圏内には入ってこなかったものの、何人かの有望な書き手を見いだすことができました。
応募数は多くはなかったものの、精度、もしくは命中率の高かった作品を書かれた方、或いは昨年から引き続いての参加組の中で、そのランキング順位を大幅に伸ばした方、今回から郵送参加が廃止となり替わりに携帯電話からの応募を受け付ける形となりましたが、携帯電話という作業環境でのみ作成されながら30本を超える応募数を記録された方など、言うなればかなり伸びしろがあるのではないかと期待できる方々を多く見いだすことができたのは、昨年に引き続いて大きな収穫となりました。

昨年の第一回は、「超」怖い話共著者を発掘することが最大の目標となりましたが、今年の超-1は、「より多くの体験談を見付ける能力を持ち、紙に記録して後世に残していくべき怪談を書く気概と必然を供えた怪談の担い手」を、一人でも多く見いだしていくことを、その狙いとしています。

怪談を提示し記録するため、「超」怖い話共著者枠以外の機会を作り出すことも含めて、超-1がそうした怪談を世に出す必要がある人々、怪談を読まなければならない人々の架け橋となれれば幸いです。

 

なお、来年、超-1/2008が開催されるかどうかについては、現時点では確定していません。今回が二度目にして最後になるかもしれませんし、来年、改めて超-1を継続開催できるかもしれません。これについては、追って開催可否についてお知らせすることとなるものと思います。
雪辱の機会、或いは「なお持て余す怪の開陳先」として、超-1/2008で皆様と再会できることを、切望しています。

 

2007年8月10日

超-1/2007実行委員会
加藤 一

 

最終
順位

ペンネーム*

eNo

参加
回数

前回
順位

応募
総数

001

(空位)

-

-

-

-

002

藪 蔵人

54

2

5

28

003

ダウン

08

2

3

42

004

矢内 倫吾

47

2

6

44

005

HYDROGEN

03

2

8

20

006

20

2

7

13

007

つくね乱蔵

09

-

13

008

44

-

12

009

山際 みさき

28

2

49

40

010

北極ジロ

42

2

11

9

011

黒ムク

25

-

30

012

cross2M

02

-

8

013

藤 さくら

37

-

7

014

与粋 鴎歌

50

2

12

8

015

ぼっこし屋

13

2

16

7

016

高田公太

24

-

9

017

雛人

34

-

6

018

水無月 あくあ

33

-

2

019

じゅりんだ

07

-

12

020

Aikoh

01

2

21

2

021

夜鷹

46

-

12

022

壱楼(一郎)

17

2

56

3

023

日の出待ち

39

-

2

024

竹下 登

36

-

3

025

有線

48

-

10

026

寺町 聖仁

29

2

10

2

027

夢屋 陣

45

-

5

028

上野東雲

30

-

3

029

水町一稀

32

2

29

6

030

totoro

04

-

1

031

萩原 周

40

2

54

1

032

22

-

1

033

ももっち

14

-

1

034

ハリー毒嶋

11

-

1

035

北 犬吉

41

-

3

036

麻田 夕真

43

-

4

037

藤子

38

-

1

038

有馬 八景

49

-

2

039

戸井田 範子

23

2

22

1

040

人刀

31

-

2

041

佐久間

27

-

1

042

黒井トロ

26

-

1

043

かーま

05

-

1

044

梶ゆういち

18

-

9

045

両儀式

52

-

2

046

藍璃

51

-

2

047

青い空

35

-

1

048

安友成人

16

-

2

049

林田けいすけ

53

-

1

050

くまさ

06

-

1

051

よーで

15

-

2

052

はりー

10

-

3

053

結城 綾

21

-

1

054

ふゆちん

12

-

4

055
(失格)

菊池サトミ

19

-

0

 

      ※昨年と今年でPNが変わった方については、初参加枠ではなく、二度目の参加としてあります。
      ※※失格となっている方については、「作品応募はあったが、内容が規定を満たしていないため、作品公開ができなかった」というものですが、応募があった事実を踏まえ、ランキングには参考順位として掲載しました。